「国防政治の研究」東北帝国大学助教授 五十嵐豊作

「国防政治の研究」東北帝国大学助教授 五十嵐豊作
昭和ニ十年三月十日 第一刷發行

山鹿素行においては、治國の根本は道徳とともに『作法』(法令)にあると考えられ、『道徳兼備の工夫(『兵法神武雄備集奥義』巻第一)が強調されて、その兵學は、氏長を超えてすぐれて政治學たる性格を持つに至ったのである。
 すなわちいはく『法は作法なり。本あれば法あり。其の法を勤めずして其の極みに至らん欲する者は成らざるなり。譬へば猶ほ藝術(技術力)を習ふがごとし。其の妙を得るものは道なり。術其の練を得るものは法なり。道法兼備せざれば事齋(ととの)はず。或は世間に居て山林に居るが如く或は世間(山林力)に居て専ら名利に糜(つな)がる。皆道純(もっぱ)らにして法備はらず、法純らにして道修らざるの爲す所なり。兵を和し仁を好みて下四支如きものは、道の成るなり。然れども用、法に合わざれば衆寡の用皆背く。是れ法の成らざるなり。道と云ひ法と云ひ偏廢すべけんや』。すなわち法とは『萬人を道に至らしめんが爲に』作られたもので、これによって彼らを導くのである。

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