悲しみの底で 猫が教えてくれた 大切なこと

悲しみの底で 猫が教えてくれた 大切なこと

[あらすじ]

白い紙に黒い絵が描かれたシンプルな装丁は意外にも目立つ。黒猫と話をしているような青年。彼の名は五郎という。本書の主人公である。福島の実家をある理由で飛び出し、田舎のパチンコ店でアルバイトをしている。やる気はなさそうなのに、店の常連たちには人気がある。生来、優しい性格をしていると見抜かれているからだろう。

 今年還暦を迎えた弓子さんはノラ猫やノラ犬の里親探しのノートをつくっている。パチンコ店のノラ猫のエサを毎日五郎に渡す。二十歳前半の宏夢というフリーターには妙に懐かれる。町内一の金持ち、不動産屋の門倉には説教されつつ、人生を教えてもらっている。

 ある日五郎は、弓子さんが置いていった「里親探しノート」に幼い字でこんなことが書かれているのを見つけた。

『ネコは、ごはんを何日食べなければ死にますか?』

 ちょうどその時、なんでも屋の見習い、宏夢からSOSの電話が入る。猫アレルギーのくせに動物業者から捕獲を頼まれたのだ。夜逃げあとのアパートで、痩せ細ったその猫は、鳴きもせず飼い主を待っていた。あの文章はもしかして……。

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